器楽合奏 〜楽しい合奏をするための楽しくない話〜


 絶対に楽しいはずの「音楽」が、「音が苦」になってしまうようなことはありませんか?
もともと人間は、胎児の頃から本能的に音楽に反応する力を持っています。しかしながら、幼児期に出会った集団での音楽経験のひとつとして、面白くない合奏をさせられてから、マイナスの反応をしてしまう子ども達を見かけることは、ありませんか?
それは、音楽が楽しいもの、心地よいものであることをうまく伝えられなかった指導者の失敗です。ではその原因は・・・・・・・。
 いまだ演奏するテクニックを充分に持たない子ども達にでも演奏可能な、つまり簡単なテクニックでもやれるようにして、「楽しい、もっとやりたい」と思うような方法を考えられなかったり、与えられなかったからではないでしょうか。つまり無理なことを押し付けているからなのです。
そこで、本来子ども達が本能的に持っている、音楽を楽しむ力を引き出しながら、集団だからこそ出来る演奏の方法、決して子どもだからと妥協することのない合奏の仕方「楽器とともだち」を考案しました。音楽の三要素であるメロディ・ハーモニー・リズムがきちんとあります。
 沢山の仲間達と「合奏する」という喜び、一人では出来なくても多くの友達とひとつになって力を合わせれば素晴らしい音楽を創り出せるという喜びを是非にも伝えていきたい。
メッチャ楽しい合奏をしましょう。「もっと、もっと」と子ども達からせがまれるような合奏を。

使える楽器と使えない楽器
  子ども達にとって扱うことができる楽器をえらばねばなりません。
  奏法上、難しい楽器や子どもの力では無理な、バカでかい楽器は避けねばなりません。
  しかし演奏的に扱い的に、子どもでも演奏可能になるように工夫ができれば、使用可能
  となります。たとえば皆さんがよく知っているピアノという楽器は、子どもの手のひらでは
  オクターブが届きません。だから使用不可能です。けれどピアノは、子どもでも弾けるよう
  なメトードがあります。ようするに、小さい手でも弾けるように、オクターブが出て来ない、
  あるいは音の数が少ない、そういう曲(練習曲なども)がかなり以前から作曲されてきま
  した。おとなが使う楽器をこどもでも使えるようにした訳です。バイオリンなどは逆の考え
  方です。おとなのバイオリンを、子どもが弾けるように小さいバイオリンを製作しました。
  1/2 ・1/4 のバイオリンです。ようするに子ども達が扱えるように工夫をすればいい
  訳です。


日幼研では、こんな楽器を・・・。
 日幼研では、いろんな楽器を試してみて、これなら子ども達にも充分扱うことができると判
 断した楽器を使っています。その主なものをご紹介いたします。
 まずは、打楽器から紹介したいと思います。
カ ウ ベ ル


ラテン合奏には、なくてはならない楽器です。
大・中・小と大きさがいろいろあります。子どもの手に合う
ものとして、一番小さなものを使います。
ク ラ ベ ス


四角いタイプのものと丸いタイプのものがあります。
四角いものは、叩いている中にささくれ立ってきますので、
トゲが危ないから丸いものの方が良いと思います。
ギ  ロ

いろんな材質のものが出ておりますが、硬質プラスティックのものの方
が、音質がいいようです。
トライアングル

大・中・小と大きさがいろいろあります。子どもの手に合うものとして、
一番小さなものを使います。
カスタネット これは説明は要らないでしょう。
マ ラ カ ス


この楽器は軽いですから、どんなタイプのものでも使用可能ですが、振
るときのストロークを考えるとやはり小さなものが良いようです。直径8
センチ位の玉のもので、硬質プラスティックのものが良いと思います。
アゴゴベル この楽器も小さなものを使って下さい。
カ バ サ

この楽器は、見た目より結構ずっしりと重いですから、絶対に一番小さ
なものを選んで下さい。
シェーカー 子どもの手で、握れる太さのものを使います。
ティンパレス

スタンドに取り付けて使いますので、スタンドの高さが問題です。子ども
の丁度良い高さになるように、スタンドを切断すると良いでしょう。
ボ ン ゴ



この楽器は本来足に挟んで、手のひらで叩くものですが、それは子ども
には無理です。したがってスタンドに取り付けて、木琴のバチで叩くよう
にします。もちろんスタンドが丁度良い高さになるよう、スタンドを切断し
ます。
コ ン ガ

この楽器は値段の一番安価なものが、高さが低いので子どもに最適で
す。木琴のバチや中太鼓のバチで叩きます。
 つぎに鍵盤楽器です。この楽器は子どもでも比較的安易に使用可能ですが、いままでは
 わりとメロディーやオブリガートなどメロディックな演奏をさせることがしばしばでした。しかし
 この楽器、鍵盤にめがけてバチを振り下ろしてもなかなか鍵盤に命中しないため、困難を
 きわめます。したがって日幼研では、この楽器はリズム楽器のように扱います。さすれば
 子ども達にとって非常に楽になります。
グ ロ ッ ケ ン 鉄琴のことです。
シ ロ フ ォ ン 木琴のことですが、比較的音が硬目のものです。
マ リ ン バ これも木琴ですが、シロフォンより音が柔らかいものです。
 つぎに重要なハーモニーのパートを受け持つ楽器になりますが、これにはオルガンやキーボ
 ードを使用します。ハーモニーの4音を弾くわけですが、1台のキーボード(オルガン)を2人で
 演奏します。1人が右手と左手の人差し指で2つの音、もう1人の人も同じように右手と左手の
 人差し指で2つの音、2人で4つの音を出してハーモニーをつくります。
 そして全体を下からささえる意味で非常に重要なベースです。
 これにはやはりキーボードを使用します。
 最後にメロディーを受け持つ、鍵盤ハーモニカで、概ね全部のパートが出揃ったわけです。


楽器が揃ったからといって
      楽しい合奏になるとは限らない。

 いうまでもありません。楽しい合奏をするには、それだけのノウハウとそれを指導する先生の
 力量にあります。「子どもの頃から音楽は苦手だったから、私は駄目だ」と思わないで下さい。
 ほんの少し、あと少し私達と一緒に努力してみて下さい。また音楽の得意な先生が指導なさ
 ると、より楽しい合奏になるかというと、これまたそうとは限りません。
 じゃあ、「楽しい合奏」って何?
 それは合奏するときの子ども達の表情をみていれば、おのずと解ります。ところがよく見かけ
 るのに、こんな例があります。子ども達がする合奏の伴奏を先生がピアノで弾いている。弾い
 ている先生も間違わないように必死で弾いています。しかもピアノがアップライトなので、先生
 は壁の方を向いて座っているのです。これじぁ、子ども達の表情を見ることも感じ取ることもで
 きないですね。
 合奏は、子ども達と指導者が向き合う状態で、まずは子ども達の表情を感じ取ってください。
 そこからすべてが始まります。指導者は子ども達のためとはいえ、ピアノなど弾いてる暇はな
 いのです。


「楽器とともだち」
 日幼研の考えた合奏の仕方です。
 沢山の打楽器を使用し、その打楽器すべてが子ども達にとって演奏可能な、つまりテクニック
 的に非常に簡単なリズムを演奏します。ところがこのリズム、各楽器ごとにちょっとづつの違い
 をわざと造ってあります。そして全打楽器が同時に演奏し始めると、子ども達が演奏している
 とは思えない程の複雑な難しそうなリズムが現れます。まさに集団のなせる「ワザ」です。
 「上手な合奏」というより、みんなで合奏する・・・という行為の中から、協調・協力・信頼・集中・
 共有などを感じ取ることができるようになる・・・・・そういうことを伝えることができる合奏である
 べきでは・・・・・?と考えます。
 指導者は子ども達の表情を見るのに、感じるのに大忙し。嬉しい限りです。
 さぁ、みんな集まって合奏をしましょう。
                                 (記=四海敦子)